新刊のお知らせ。
宮沢賢治・作 植田真・絵
『セロ弾きのゴーシュ』
『セロ弾きのゴーシュ』を描きませんかと
依頼があったとき、すごく嬉しい気持ちの片隅で
これはなかなか難しい仕事だなという気持ちもあって、
複雑な心境だった。
というのも、ゴーシュは茂田井武さん赤羽末吉さんなど
すでに多くの絵描きによって絵本になっているから。
僕は僕のゴーシュを描ききれるかどうかという気持ちがあった。
しかし、何度も何度もゴーシュを読みこんでいくうちに
宮沢賢治の文章にあるリズムや、孤独や、滑稽さなどが
僕の身体に染み込んでくるような感じがした。
本の判型やページ数などは、
僕が決めていいということだったので、
まず、独特の土っぽさとモダンが合わさった
このゴーシュの面白さを前提に考え、
文章のリズム感は壊さないように32ページの絵本ではなく、
読み物としての体裁でいこうと思った。
判型は読み物では一般的なタテではなくヨコにして
文芸ではなく絵本的な雰囲気を意識しつつ、
日本語が読みやすいタテ書きでいくことにした。
絵はなるべく柔らかいテンションで描くために
紙に思いつくままのシーンを何枚も描いていった。
この時間はずっと描いていられるくらい楽しく
描けば描くほど、線も柔らかくなっていった。
この依頼がきた時からお願いしたいと思っていた名久井直子さんに
デザインをお願いし、描き溜めた絵すべてをお渡しして、
自由にレイアウトしてもらった。
おかげで、僕がこの本に内包したかった匂いや空気や温度は
きちんと閉じ込めてくれつつ、それ以上のエッセンスがプラスされ、
自分がイメージしていた以上の本が出来上がったと思う。
土っぽさとモダン。
孤独と滑稽。
憎たらしさと愛らしさ。
「セロ弾きのゴーシュ」の面白さを存分に味わっていただけたら幸いです。
書店には今月末くらいから並ぶ予定ですが、
現在僕の個展が開催されている吉祥寺・トムズボックスには
先行して数冊入荷の予定です。
(ちなみに植田は、1月25日(日)、
昼すぎ〜夕方17時頃までトムズボックス在廊。)
原画展開催の予定などもありますが、
それはまた後日お知らせします。