2012年11月3日土曜日

メキシコ記 その1

























写真の整理をしていたら、昨年のメキシコ旅行の写真が出てきた。
昨年のちょうど今頃の、メキシコ死者の日の写真。

死者の日とは、お盆のようなもので
11月1日が子供の魂が帰ってくる日、
11月2日が大人の魂が帰ってくる日とされている。

街は、あちこちに祭壇が作られ、鮮やかなマリーゴールドの色と香りに包まれる。
陽も落ちてくるとどこかで花火が鳴って、楽団が賑やかな音楽を鳴らしはじめる。
音楽が聞こえると、街の人たちも観光客も一緒になって
楽団の後を踊りながらついていく。ぞろぞろと人が増え行進がはじまる。

はるばる魂が自分たちのもとに帰ってくるから、楽しくみんなで踊ったり、
または静かに故人への思いを馳せたり、語り合ったりするという日。

メキシコ(だけじゃなく、世の中各地で)は、様々な怖い出来事が起こっている。
行く前は友人や家族などに「こんな事件があるよ、大丈夫?」と心配されたし、
自分でも調べたりして正直怖くもなった。
でも、行ってみたら怖い体験することなく心から旅を楽しむことができた。
だからといって、安全な国ですよというわけではなく、
僕もそれなりに気をつけていたけれど、
なんというか、情報だけで知り得ていた恐怖の気配は感じられなかった。

近年、情報というものが常に、簡単に、黙っていても流れてくる。
いち情報にすぎないのに、ついつい物事を知った気になってしまうことがある。
情報だけでは、楽観視することもいけないし、恐怖に踊らされる必要もない。
その場所にある生身の気配というのは、その場所にしか存在しない。

メキシコで夕暮れに突如、道の向こうから音楽が鳴って楽団がやってきた時は
涙が出るくらいかっこ良くて感動した。

そういう情景は、メキシコに来る前にぼんやり頭の中に出来上がったイメージとは
全く噛み合なかった。

それが、その瞬間が、ただただかっこ良かった。

信じたくない恐怖もあるけれど、信じられないくらい美しい出来事だってある。
そして、どうしたって踊ってしまう音楽がある。
世の中とはそういうものなんだと、頭じゃなく身体が納得したように感じた。